イッツアスモールワールド


世界がいくら広かろうと、
自分の目で耳で、或いは足で、
触れられない世界は存在しないのと同じだ。
日本という国で19年も生きていれば世界地図だとか地球儀だとかいう
素晴らしく美しい造形を何度も目にはしたけれど、
やっぱりそれは絵に描いた餅とかいう奴で(ちょっと違うか、
だから私にとってはアメリカもヨーロッパも北極も、
映画や小説の中の虚構と変わらない非現実のように思える。
どんな人間にとっても、
自分の暮らす土地や手の届く範囲が世界のすべてじゃなかろうか。
できるならば広い世界に生きていたいと思うけれど、
私は残念ながら極度の方向音痴なので自宅の周囲ですら容易に冒険などできなくて、
しかも世の中は今この瞬間にも常に形を変えているわけで、
だから広い広い世界のすべてを誰も知ることなどできない。
宇宙は膨張しているらしいしさ。
そんな風に考えていると自分がひどく惨めなもののように思えるけれど、
だからって私にとっての小さな小さな世界が醜いだなんて微塵も思わないし、
それならこうやって卓上旅行に夢を馳せるだけの日々も悪くないんだろうし、
安らかな気持ちで一日を終えられるような、
そんなくすぐったい幸せに満たされてしまうのです。


年末特番でテレビがつまらんのでトイレで読書しながら遠い国に思いを馳せてみる。