夢日記


雷鳴で目が覚めた。
――近い。
茫洋とした遠雷ではない、鋭利な音だった。
部屋の窓は擦りガラスで外は窺えない。
静かだった。
雨の音は聞こえない、と思う。
気の所為だったのか、
或いは夢の終わりと現実とを混同しているのか。
そんなことを考えているうちに、
もう一度雷鳴が轟いた。
家から出て少し行くと雑木林がある。
嵐の後に真っ二つに割れた樹をよく見るから、
今日もあのあたりに落ちたのかもしれない。


雷が鳴ってるんじゃ外には出られないな、なんて
ナマケモノの僕は再び布団を被った。




海の近くのホテルに泊まっていた。
知らない街だ。
ロビーで偶然、中学時代の友人に会う。
彼女の母親がこの街の生まれなのだそうだ。帰省中らしい。
「どのあたりに住んでいるの?」
硝子張りのロビーから街を見渡す。
「昼間だったら、此処からでも見えるんだけれどね、」
夜の海は暗い。街もまたそれに飲まれていた。
少し話をした後、彼女は帰っていった。


僕は家族と、そして幼馴染の家族、
7人でホテルに滞在している。
旧友にあった翌朝、
その日は海から近い山へとキャンプへ行くとかで、
皆は大荷物と共に車に乗り込んだ。
僕は乗らなかった。
家族と折り合いが悪いのは元々で、
ホテルを出る直前に何か小さな衝突があったのだろう。
乗用車という小さな空間で過ごすのが苦痛だった。
僕は大きなリュックを背負い、
ひとり歩いてゆくことにした。


道すがら、昨日の彼女に声を掛けられた。
「どこへ行くの、」
僕は行き先を伝える。
「少し、遠いね」
自慢ではないが方向音痴の僕が、
地図も無いのにそこへ向かうのは些か無謀というものだった。
「案内しようか?」
そんな彼女の提案はとても魅力的だった。
断る理由も無いのでそのまま彼女に道案内を頼む。
歩けば長いその道程を、
彼女は何故親切についてきてくれるのか。
帰りは一人で帰らねばならないのに?
そんな疑問は、頭の隅に一瞬浮かんだだけだった。


僕らは手を繋いで歩いていた。
海沿いの道は車の通りも多い。
土産物屋の並ぶ商店街を抜け、
段々と海から離れ山の方へ。
僕らは何を話すでもなく、
手を繋いで歩いていた。


途中で買い物の用を思い出す。
キャンプは何かと物要りで、
大きなリュックを背負って尚も足りないものがあったのだ。
彼女はスーパーへ寄ってくれた。
それは僕の住む街にもある、
大手のチェーン店だった。
もうホテルの辺りから大分離れているのに、
彼女は随分と地理に明るい。
行動的な彼女故に頷けないことも無かったが、
なんとなく不思議に思い、また感心した。
買い物かごをカートに載せ店内を歩く。


「ところで、いつ本当のことを話すつもり?」
僕は唐突に切り出していた。
彼女は不敵に笑う。
「そうね、今この瞬間から先、この手を離したときにすべて思い出すわ」
僕らは手を繋いだままだった。
「けれどそうしなくても、私は徐々に思い出してゆく。
あなたが私にそうさせるきっかけを与えたから。
けれどねぇ、そうしたらあなたは辿り着けない。
辿り着きたければ、この手を離さないで。
そして、思い出してゆく私を常に引き止めていて」
僕は考えた。
「案内ありがとう、もう少しよろしく、と言えばわかるだろうか」
彼女は微笑んだ。


僕は彼女が昨年の夏に死んだことを知っていた。


手を繋ぐ彼女は気付くと無表情になり、
どこか遠くを見るような目になる。
これが思い出す、ということなんだろうか。
彼女の名を呼ぶ。
「ありがとう。もう少し、案内を頼むよ」
彼女に表情が戻る。にっこり微笑んでまた歩き出す。




…あ、飽きたのでここまでで^^;
この後僕は何かのきっかけで手を離し、
彼女は壮絶な表情で僕に詰め寄ります。
彼女は姿を消しますが僕は錯乱して、
気付けば病院へ運ばれていました。
目を醒ましたベッドの上で、
僕は次の彼女の命日まで、彼女に呪われることを知っていました。
(結局ホラーだった。怖い。しかも彼女は存命の実在の友人です。すまない!)
ともあれ二度寝して起きて今に至ると、そんな感じです。
夢って不思議ですね。
こんな夢を見る要素はまるで浮かばないのですが。
深層心理ってやつでしょうか。


ちなみに二度寝する前の夢も面白かったです。
僕が約束に遅れた所為で友人が警察に補導され、
何故か莫大な金額の罰金(科料かな?)を請求されています。
夜遅くまでひとりでふらついていたからってあんまりです。
しかも友人はひとりでおばけ屋敷に行ったりしていたそうで、
現実では怖い話大っ嫌いなのにねぇと思ったり。
本人に「こんな夢見た!」なんて報告しようものなら、
「あぁ!?勝手に人を夢に出した挙句に補導だ?慰謝料払えよ」とか言われます。
えぇそういう友人です。(大好きだよ、Aさんv
なのでここに書きましたけど本人読むかもしれないのでハラハラしてます。
というわけで、今日は夢日記でした。
これから出かけて悪友とディナーです。金無い!