そしてまためもめも。


 見渡せばあの頃のままの景色がそこにある。けれどそれは、決定的な違いを以って私の目に映っていた。似つかわしくない寂寥の想いが去来する。自嘲の笑みを抑えることは出来なかった。本当に、なんて不似合いな感情だろう。今になって、悲しい、等と。感傷的になってしまうのはきっと、頬を撫でる風があまりに優しいからだと自分自身を説き伏せた。
 私が悲しみ悔やんだところで時は戻らないのだ。そう、喩え涙を流し許しを乞うたとしても、現実は何も変わらない。厳格に同じ速度で時は流れつづけるだけ。
 日差しはどこまでも柔らかく、けれどまだ空気には冷たさも残る。蕾む木々は未だ外を窺っているようで、ちらほらと開きはじめた薄紅が枝を彩っていた。
 戻らないのだ。あの時散ってしまった花と、この蕾とは同じであって違うもの。もう二度と咲くことなど無い。そんなことはとうに理解していた。理解していた筈なのに、


「・・・・っ ははは、」


 気でも触れただろうか。滑稽だ。あまりの可笑しさに、声を上げて笑った。けれどそれが頬を伝うのを止めることは叶わなかった。泣いている?まさか、この私が。
 彼女は死んだのだ。ただ、こうして季節が巡りこの場所に来るまで認められなかっただけのこと。理解したふりをして、その上でなんでもない風を装って。本当はただ、どこか暗い場所へ仕舞い込んで蓋を閉めて鍵を掛けて、見なかったことにしていただけ。信じたくないものから目を背けて大切なことを忘れようとして。あぁ、なんて滑稽なんだろう。
 改めて見渡す景色は眩しいほどに鮮やかで。


 そこにはただ、春の陽がきらきら輝いていた。



(…あれ?い、一貫性が無いな。こんだけ短い文で食い違いが…まぁ仕方ないですか。所詮めもめも。)
(シャワー浴びた後でカタカタ打ってると身体が冷え切りますね。)
(早く寝ろって)