白昼夢


気付いたら君はもう死んでいた。


人はどうしてこうも自分勝手なのだろうと思う。
それはきっと本能というやつで、
抑えようと足掻いてもかなわないものだろうと自分を納得させるけれど。
けれどわかっている。
人類すべてがそうなのだということにして、
醜い自分を正当化したいだけなんだ。
あぁ、そうだ。僕は醜い。
自分勝手で我儘で、どうしようもなく正直だった。


愛している、と最初に告げたのはいつだったか。
君は微笑んだ。
そして一言、ありがとうとだけ言った。
僕はわかっていた。
君が他の誰かを愛していることも、
そしてその誰かはもう手の届かないところにいることも。
なんて狡いんだ、愛されたままいってしまうなんて。
僕は顔も知らない誰かを羨んだ。
狡いのは僕のほうだ。
手の届かない誰かよりずっと、君の近くにいられるのに。
それでも君の瞳が僕を向かないことが悔しかった。
憎いのは君?遠い誰か?それとも僕自身?


あぁ、殺してしまいたい!


僕の手のひらが君の細く美しい首に絡んで、
慈しみ愛するように強く締め上げた。
手に入らないものならば、いっそなくなればいい。
君に曖昧な微笑を強いることもなくて済む。
それに、
愛されたまま遠くにいけるのは幸せなことでしょう?


遠くにいってしまったあの人のように


呼吸をしなくなった君はとても綺麗だった。
僕に向けられたことのない優しい顔をしていた。
“やっと彼のところへいけるのね”
君は僕だった。
愛するが故、愛されるが故に人は人を手にかける。
なんて愚かしい。
人類の欲望は尽きるところを知らない。
赦される罪。
そう、すべては愛故に。


(君を殺す夢を見る。嘘だ、本当は殺されたいと願っている。あぁ、僕は狂っている)