fallen


雨の匂いがした。
夕暮れの雲は茜色、
濡れた翼をはためかせ
青い鳥の飛んでゆく。


何故泣いていたのか。
いつかのだれかを思い出し、
死者を弔う声だけが
虹の彼方に今もきく。


積み重ねた遺骸の
その上に生きつつも


傘を差さず歩いた
あの雨の日に君と
雲の切れ間の太陽に
眩しくて目を細めては
微笑い、
泣いて、


ひらいた掌に。
小さな灯りは届かずに、
ただいつまでも眺めてた
濡れた雫の滲むのを。